平和の棚の会 ~争いと差別のない暮らしへ~

2008年12月に20社の出版社で設立した「平和の棚の会」のブログです

平和をのぞむすべての人びとへ いまこそ、平和を問いなおそう

7月26日に起きた痛ましい事件や参議院選、都知事選の結果を踏まえ、平和の棚の会では会としてなにができるかについて議論を重ね、今回声明を出すことに致しました。お読みいただければ幸いです。


 7月26日、痛ましい事件が発生しました。神奈川県の障害者施設での大量殺戮事件です。容疑者は障害者を狙ったことをはっきりと供述し、障害の重い人びとを優先して襲った、と報道されています。この凶行の背後には、これまで日本社会がおし進めてきた効率優先の政策(それにそぐわない人びとを排除するという意味で優生思想が背景にある)の影響が無視できません。しかし、この凶行について、自民党内からは「人権という美名のもとに犯罪が横行している」として精神障害者の監視など人権をさらに制限しようという倒錯した主張がわき起こっています。この凶行の持つ意味について政府・与党がとっている態度に、わたしたち「平和の棚の会」は強い憤りをおぼえます。
一方で市民の中にも程度の差はあれ、こうした優生思想があることも思い起こしておかなければなりません。なぜ障害者施設が郊外に作られるのか、なぜ被害者の名前を公表するのも憚られるような雰囲気があるのか。この恐るべき凶行の犯人を「怪物」として自分たちから切り離された存在とすることはできません。

 「戦後70年」とされた昨年、「平和安全法制」と名付けられた法律が国会で強行採決され、今年3月に「施行」されました。それに対し、いわゆる「平和運動」だけでなく、「貧困をなくせ!」「保育所つくれ!」「原発反対!」などの広範な問題意識を持った多くの人びとが「戦争法制」反対で一致し、声をあげました。画期的な運動であったと言えます。しかし、結果として「戦争法制」は「成立」し、「施行」され、それを強行した勢力が参議院選東京都知事選で勝利しました。その要因の一つに、わたしたち「平和の棚の会」が目指す「積極的平和」という考え方が、日本社会にまだ広がっていないという事実があります。
米軍占領下、さらに返還後も続いてきた沖縄の基地被害、ヘイトスピーチやさまざまな差別で脅かされる在日朝鮮・韓国人をはじめとした外国籍の人びとの人権、餓死者が生じるほど切り詰められてきた社会福祉、多くの過労死を生み出す雇用環境、重大事故を起こし多くの人びとの生活を破壊したにもかかわらず再稼働を強行している原発問題、そして大量の犠牲者を出した優生思想の蔓延。どれも「平和」に欠かせない要件がないがしろにされています。これらの事実は、自明とされがちな「平和」についていまいちど振り返ってみる必要があることを示唆しているでしょう。
「平和の棚の会」は「積極的平和」を目指して2008年に発足した出版社の団体です(現在18社加盟)。「積極的平和」は、「平和」を「戦争・紛争・武力衝突のない状態」だけではなく、「衣食住・人種・福祉・ジェンダーなどで差別されず、命が脅かされず、持続可能な環境と暮らしが保障される状態」(ヨハン・ガルトゥング博士提唱)と捉えます。わたしたちはこの考えのもとで様々な書籍の出版を通じて平和とは何かを問題提起し、各地の書店で「積極的平和」をメインテーマにしたフェアを展開してきました。
戦争法制の「成立」と「施行」、参議院選・都知事選の結果や、この痛ましい事件を受けて、わたしたち「平和の棚の会」は、現在の「衣食住・人種・福祉・ジェンダーなどで差別されず、命が脅かされず、持続可能な環境と暮らしが保障されること」が軽視される社会を深く憂慮し、「平和」をのぞむすべての人びとに、真の「平和」を実現するため、いま一度「平和」について深く問い直すことを呼びかけます。

2016年9月8日

平和の棚の会一同
あけび書房、大月書店、凱風社、学習の友社、花伝社、かもがわ出版、金曜日、現代書館、現代人文社、合同出版、高文研、コモンズ、彩流社、新泉社、新日本出版社、新評論、同時代社、七つ森書館